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楕円曲線のデルタの逆数のq展開の係数が整数であることの証明

楕円曲線で使われる \Delta の逆数のq展開の係数が整数であることの証明が素晴らしかったので、メモしておきます。

 d \in Zについて d^{3} = d^{5} (mod 12)であることの証明。

 d^{5} - d^{3} = d^{2} (d-1) d (d +1)
ここで、
 A = d^{2}
 B = (d-1) d (d+1)
とおく。
 Bは連続する3つの整数なので3の倍数、連続する2つの整数を含むので2の倍数でもある、したがって6の倍数である。
dが奇数の場合、d-1, d+1は偶数で、Bは4の倍数なので、Bは12の倍数であり、ABは12の倍数である。
dが偶数の場合、偶数の自乗は4の倍数である。したがって、ABは12の倍数である。■

 d \in Z について  5 \sum_{d|n} d^{3} + 7 \sum_{d|n} d^{5} = 0 (mod 12)であることの証明。

   5d^{3} + 7d^{5} = 5(d^{5} + 12k) + 7d^{5} ここで k \in Z
 = 12 d^{5} + 5 \cdot 12k = 0 (mod 12)
12の倍数を有限個加算したものも12の倍数である。 ■

以下は計算済みとして定義します。
 g_2 = \frac {(2 \pi)^{4}} {12} ( 1 + 240 X)
 X = \sum_{n=1}^{\infty} \sigma_3 (n) q^{n}
 \sigma_3 (n) =\sum_{d|n} d^{3}

 g_3 = \frac {(2 \pi)^{6}} {216} ( 1 - 504Y)
 Y = \sum_{n=1}^{\infty} \sigma_5 (n) q^{n}
 \sigma_5 (n) = \sum_{d|n} d^{5}

 \Delta = {g_2}^{3} - 27 {g_3}^{2}

愚直に代入して計算すると、
  1728 (2 \pi)^{-12} \Delta = (1 + 240X)^{3} - (1 - 504Y)^{2}

 右辺 = 144 (5X + 7Y)( \mod 1728)
したがって、
 1728 (2 \pi)^{-12} \Delta = 1728k + 144 (5X + 7Y)ここで k \in Z
 5X + 7Y = 5 \sum_{n=1}^{\infty} \sigma_3 (n) q^{n} + 7 \sum_{n=1}^{\infty} \sigma_5 (n) q^{n}
 = \sum_{n=1}^{\infty} \sum_{d|n} 5 d^{3} q^{n} + \sum_{n=1}^{\infty} \sum_{d|n} 7 d^{5} q^{n}
 = \sum_{n=1}^{\infty} 12m q^{n}ここで m \in Z

 144 \cdot 12 = 1728なので
 (2 \pi)^{-12} \Delta = k + \sum_{n=1}^{\infty} m q^{n}
k, mは整数なので、
 (2 \pi)^{-12} \Delta = \sum_{n=0}^{\infty} d_n q^{n}, d_n \in Z
となる。
ここで、n=0の係数は0でn=1の係数は1であることは証明せずに認める。すると以下となる。
 (2 \pi)^{-12} \Delta = q (1 + \sum_{n=1}^{\infty} e_n q^{n}), e_n \in Z

 (2 \pi)^{12} {\Delta}^{-1} = q^{-1} \sum_{n=0}^{\infty} f_n q^{n}, f_n \in Zであることの証明。
 T(q) = \sum_{n=1}^{\infty} e_n q^{n}とおく。
m回微分したものは、
 T^{(m)}(q) = \sum_{n=m}^{\infty} e_n n \cdot (n-1) ... (n-m+1) q^{n-m}
q=0の時の値は、
 T^{(m)}(0) = e_m \cdot m!
 S(q) = \frac {1} {(2 \pi)^{-12} \Delta} - \frac {1} {q} = \frac {1} {q} \cdot \frac {1} {1 + T(q)} - \frac {1} {q}
ここで F(q) = \frac {1} {1 + T(q)}をq = 0の周りでTayler展開する。
 F(q) = \sum_{n=0} F^{(n)}(0) \frac {1} {n!} q^{n}
 F^{(1)} (q) = (-1) (1 + T(q))^{-2} T^{(1)} (q)
 F^{(2)} (q) = (-1)(-2)(1 + T(q))^{-3} {(T^{(1)} (q))}^{2} + (-1)(1 + T(q))^{-2} T^{(2)}(q)
 F^{(3)} (q) = (-1)(-2)(-3) {(1 + T(q))}^{-4} {({T}^{(1)} (q))}^{3}  + (-1)(-2) 3 {(1+T(q))}^{-3} {T}^{(1)} (q) {T}^{(2)} (q) + (-1) {(1+T(q))}^{-2} {T}^{(3)} (q)

 T(0) = 0なので、
 F^{(0)} (0) = 1
 F^{(1)} (0) = (-1) \cdot e_1
 F^{(2)} (0) = (-1)(-2)(e_1)^{2} + (-1) 2! e_2
 F^{(3)} (0) = (-1)(-2)(-3)(e_1)^{3} + (-1)(-2) 3 e_1 2! e_2 + (-1) 3! e_3
となり、 F^{(n)} (0)は一般に整数のn!倍であることが分かる。したがって、
 F(q) = 1 + \sum_{n=1}^{\infty} f_n q^{n}, f_n \in Z
 S(q)= q^{-1} \sum_{n=1}^{\infty} f_n q^{n}, f_n \in Z

この証明から分かることは e_nが分かっていれば、qの低次の係数の計算に使えそうだということである。

この証明はこちらの本のexerciseに載っています。
複素解析、整数論、代数の前提知識は必要ですが、
ほとんどの証明が丁寧に書かれていて素晴らしい本です。
こんなに分かりやすい数学書は今まで読んだことがないってほどすごいです。

Elliptic Curves: Number Theory and Cryptography, Second Edition (Discrete Mathematics and Its Applications)

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